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ゲッコウ




「こっち来て。」
諒が缶ビールを片手に私を呼ぶ。
「なに?」
諒の方へ近づいて、諒を見た。
「ここ、座って。」
私に向かって、諒の隣に座るように、ぽんぽんと床を叩いている。
そして、壁に背中を預けて足を投げ出した状態で、冴子を見上げた。
諒を見たまま、動かない冴子に向かって、もう一度、声を掛ける。
「座って?」
冴子は言われるまま、なんとなく諒の隣に腰を下ろし、諒と同じように
壁にもたれ掛かった。
そして、左にいる諒の方を見た。
「どうしたの?」
「見て、月がおっきいよ。」
そう言って、窓の外の月を指差した。
その瞬間、笑わずにはいられなかった。
私はおかしくて、くすくすと笑い出した。
「なに?なんで、笑うの!?」
「だって…諒ちゃん、小学生みたい…。」
こんな諒の純粋なトコロがたまらなく好き。
「…っそんなに笑わんでも良かろ〜が…。」
「だって…!!」
「ったく…あ、ちょっと待って。」
そう言って、ムスっとしながら、諒が突然立ち上がる。
私はドキドキした。
諒が次の瞬間、何をするのか、ずっと目が離せなかった。
すると諒は部屋の電気を消して、再び同じ所に腰を下ろした。
「うん。完璧っ!」
「なに?何が完璧なのよ?」
「真っ暗だけど、明るくない?」
「えっ?」
「ほら、月明かりがさ…すごく明るいっしょ。」
「あ…ホントだ…。」
「ね!だから、今日はお月見〜。」
無邪気に諒が笑って見せた。
私のすごく好きな顔。
「冴子…もうちょっと、こっち寄って。」
諒が手を伸ばして私の肩に腕を回した。
そのまま、ぐいっと自分の方へ私を引き寄せる。
私は諒の為すがまま、諒の肩へと寄りかかった。
そっと諒の方を見ると諒も私の方を見た。
目が合って、諒が笑った。私もつられて笑う。
それから、私は頭を諒の肩に乗せて目を閉じた。
諒が息をするたび、一定のリズムで微かに肩が上下した。
「ねぇ…諒…私たち、生きてるね。」
諒は何も言わずに微笑んだ。
どうしようもないくらい優しい顔で微笑んだ。
「諒…。」
「なに?」
「…好き…。」
「えっ…?」
パタッと目が合うと、諒が心の底から驚いた顔をしているのがわかった。
その顔があんまりにも情ない顔だったから、私は思わず顔を伏せて、笑った。
「笑うなってば…。」
「だって…。」
「んもぉ〜…顔上げて!」
私は笑いを必死でこらえて顔を上げた。
「好きの反対な〜んだ?」
「え?」
今度は、私が戸惑う番だった。
好きの反対…嫌い?…じゃない気がする…。
私は少ない時間の中で必死で考えた。
そして、次の瞬間、私が答えを出すより先に諒の唇が私の唇に触れた。
「答え―キス。」
私の鼻先で小さく囁いて、いたずらっぽく諒が笑う。
「ばっかじゃないの!」
「あはははは〜!そ〜かもね。」
「もうっ!お月見終わり!電気つけるわよっ!」
あきれるくらい馬鹿なあなたが大好きよ…――諒。






END

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