CONTENTS

sponsored links

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています


はるかぜ



春風吹く川原。
土手に沿って植えられた桜も一斉に花開き、時たま風に乗って花弁が舞う。
学校帰りに何気なく寄った土手。
つないだ手をそのままに、芝生の上に滑り込んだ。

空気を胸にいっぱい吸い込んで、バタンと芝生に長身を投げ出す。
「…冴子ぉ〜。」
目を閉じて、広がる光の世界。
日の光が瞼を通して真っ白に写る。
「なに?」
「俺、今、死にたい。」
空を仰いで、目を閉じたまま静かに諒が呟く。
「縁起でもない事言わないで。」
突然の諒の言葉に不安を感じて、諒の顔を覗き込んだ。
「大丈夫、悪い意味じゃないから。」
「…じゃぁ、どういう意味?」
「そういう時ない?“あ〜このまま死んじゃってもいいや”って思える時。」
「…わからなくもないけど…。」
寝転がる諒の隣に座って、冴子は川に浮かぶカルガモを見つめた。
「俺、今、死ねたらすごくシアワセ。」

頭の横で力いっぱい咲くタンポポの黄色い花と春の匂い。
左手にある大好きな人の温もり。
このまま逝けたら何も後悔する事なんてない。
穏やかに静かに満たされるシアワセ。

これからやりたい事、遣り残した事を考えれば
まだまだたくさんあるけれど、今ならそれと引き換えに
このまま穏やかに消え入ってもいいと思えてしまう。

「諒ってホント自分勝手よね…――。」
呆れたように冴子が吐き捨てる。
相変わらず目を閉じたまま無防備に伸び切った諒を見て、
ある考えが頭をよぎる。

次の瞬間、冴子はそよ風と一緒に諒の唇に口付けた。

「っ…――!!!」
びっくりした諒が飛び起きる。
「なっ…なに!?」
「別に。」
冴子は、あっけらかんと返した。
「冴子さん…俺を殺す気っ!?」
「本望でしょ?」
「…っ………。」

シアワセ過ぎて今すぐ死にたい。



END

スポンサーサイト