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輝ける星(R+S)



「あぁ…えーと…すみません。気持ちは嬉しいんですが、俺、長谷川さんの気持ちには応えられないと思うんで…。」

真っ直ぐ自分に向けられた気持ち。
決して悪い気はしないが、断るたびに罪悪感を感じずにはいられない。
「やっぱり…ホントはわかってたの。ごめんね。」
人懐っこい笑顔を見せたものの当然のことながら、今にも泣きそうな顔だった。
その顔に胸がズキンとした。
「いえ…こちらこそ、すみません。ありがとう。」
ぺこりと頭を下げて、前髪をかきあげた。

「水沢君ってホント優しいよね。いいなぁ七瀬さんは…。」
「へっ!?」
突然、彼女の口から飛び出した名前に動揺した。
「そんなにびっくりしなくても、もうみんな知ってるよ。きっと。」
「そ…そーなんですか?」
「そーだよ。」
あははと笑いながら、あっさりと言い退けて、今度は曇りのない顔を見せた。
その笑顔に一瞬、心が惹かれた。
クラスの男子が騒ぐ理由もわかる。
確かにさっぱりとしていて、爽やかでかわいい。
「あ、言っておくけど、私が引き際いいからって軽い気持ちだと思わないでね?」
「…ハイ。でも長谷川さん、モテるんだから、俺じゃなくても…」
そこまで諒が言いかけると、彼女は諒の言葉をバッサリと遮った。
「わかってないね。水沢君。その理屈じゃ、水沢君だって、モテるんだから、七瀬さんじゃなくてもいいってことになるのよ?」
「あぁ…なるほど。」
妙に納得してしまった。
確かに、今の俺の理屈じゃ、冴子じゃなくて長谷川さんでもいいことになってしまう。
言ってる事とやってる事が矛盾する。
「それじゃダメでしょ?」
「ダメですね。」
「私も一緒。水沢君じゃなきゃ意味ないの。」

(あぁ…なるほど。)
この子に一瞬、ちょっと惹かれた理由がなんとなくわかった。
どこまでも真っ直ぐな想いだ。
正直、かわいいというよりも、すごくキレイだ。

「…スゴイっすね。その直球加減。」
心底感心してしまった。
「変化球投げれるほど器用じゃないから。私。」

(だから…そういうところが…ね…。)
誰かさんとそっくりだ。

「俺は好きですよ。そういうの。」
ポロッと本音が出てしまった。
言った後で、マズったと思って慌てて口をつぐんだが、すでに遅かった。
彼女の方に目を向けると、さっきまで真っ直ぐ前を向いていた彼女が俯いて、肩よりちょっと伸びたその髪で顔を隠していた。
「やだなぁ。水沢君…そういうところ、タチ、悪いよ……。」
「…すみません。そんなつもりじゃ…。」
小さく細い肩を目の前に触れることもできずに立ち尽くした。
その気もないのに、優しくはできない。
いっそこの肩を抱いてあげられれば、良かったんだけど…。
「謝んないでってば!もうっ…帰りなよっ!」
片方の手で顔を隠したまま、空いているほうの手で諒の胸を突いた。
「…じゃぁ…えーと。帰ります。」
自分の胸に押し付けられた細い腕をそっと優しく下ろして、諒は教室を後にした。



昇降口に着き、自分の下駄箱に頭をゴツンと当て、目を閉じて溜息をついた。
「はぁー。俺って、最低…。」

「八方美人。」
ボソリと耳元から低く小さな声が聞こえて、慌てて目を開けた。
「うをっ!さっ…さ…冴子さん!?」
「…何よ。人を化け物みたいに。失礼ね。」
「やっ…そんなつもりじゃ…不意打ちで会えた喜びをですね…その…。」
さっき、彼女に一瞬でも好意を抱いたことが諒にやましい気を持たせたのか、しどろもどろになる。
その場をうまく切り抜けることができずに、微妙な沈黙が生まれた。
「…しらじらしい。」
心なしか冴子の声が低い。
とぼけてみたものの冴子が何か気付いていることは、予想できた。
「えーと…もしかして、さっきの見てた?」
「…教室に二人でいるところが見えただけ…別に盗み聞きとかしてないから安心して。」
「ちゃんと断ったよ?」
「わかってる。」
「じゃぁ、なんでそんなに機嫌悪いの?」
「機嫌悪くなんかないわよ。」
「そ?…なら、いーけど…。」
居心地の悪い沈黙が二人を包んだ。
諒に怒っているわけではない。

「…諒、あーいうのしょっちゅうあるでしょ?」
「えっ…!?」
「出張先とかでよく言われてるでしょ?」
「そっ…そんなには……だいたい慣れてないし。」
「隠さなくたっていいわよ。」
諒の受け答えを見ていれば、すぐにわかる。
「冴子だってあるでしょ?」
諒が気まずそうに冴子の顔を覗き込みながら問い掛けた。
しかし、その問い掛けはバッサリと切り返された。
「私はないわよ。諒ちゃんとは違うもの。」
ムスッとした顔で冴子が諒を睨みつけた。
「…はい。」
少し意外な返答だったが、諒はすぐに気がついた。
(…高嶺の花すぎて、誰も近寄れないか…。ま、そのほうがありがたいけどね。)
諒が考え込んでいる間に、いつの間にか冴子が先を歩いていた。
諒は、慌てて冴子の後を追い、冴子の背中に問い掛けた。
「…ね…やっぱり、怒ってない?」
「怒ってないわよ。」
「……ホントに?」
「怒る理由なんかないじゃない。」
「…そーだけど…なんか…コワイんですけど…。」
「怒ってないってば!」
冴子が諒の前でピタリと止まり、勢い良く振り返ったと思うと、諒の唇に噛み付くように口付けをしてきた。

不安でたまらないマイナスの感情を諒に押し付けたって仕方ない。
そんなことをしていれば、いつかきっと諒は離れていってしまう。
今、私にできることは諒を信じること…そして、素直に想いを伝えるだけ…――。
まっすぐに突き抜ける飛行機雲のように。

目を開けたまま口付けをしていた二人の視線が交わった。
真っ赤になりながら、真っ直ぐ諒の目を見詰めてくる冴子の瞳が潤んでいるように見えたのは気のせいだろうか。
しばらくして、冴子が唇を離すとそのまま小声で囁いた。
「…他の女としたら許さないからっ…。」
「へっ…?なっ……なんだって?」
「なんでもない!」


END

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