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「愛してるよ」(従兄弟)

「愛しているよ」

それは言葉。
それは呪縛。
愛と口にすることで、相手の注意を引き、縛り。
感情をつなぐことで、相手を動けなくする。

いつだって羽ばたくための大きな翼を持っていた彼を、ただ一つの言葉でこの場所にとどめていた、強い強い力。

けれど、力は次第に失われる。
形あるものは、いつか形なきものとなる。
それは自然の摂理。
物事の理。

ほら、だから、何度も何度も口にした言葉は、次第に効力を失って。
今ここにあるのは、不信、疑惑、溜息、諦め、そういった感情ばかりだ。


もうこの言葉は狙った効力など持ちはしないのだ。

それでも。
彼に対して口に出来る言葉なんて、これくらいしか存在しない。

この言葉だけが、真実なのだと自分に言い聞かせる言葉だった。
この言葉だけを、真実にしたいと願っていた。

繰り返し繰り返し口にすることで、希沙良の存在を留めながら、自分の心をも、同じ場所にとどめられたらと願っていたのだ。

決して手の届かない存在に焦がれるよりも、すぐそばにある、手を伸ばせば腕をつかめる存在を求めれば、楽なのだと。幸福なのだと。

(愛している)

それは。

(愛したい)

そんな願望だった。



「なあ、アイシテルって普通そんなに連呼するものなのか」

溜息を一つこぼした希沙良が、呆れた眼差しで問いかける。
そんなに簡単に使う言葉なのか。

「使ってはいけないというルールがあるわけじゃないだろう」

俺はこの言葉が好きだから、口にするんだ。

そう呟く言葉は、けれど希沙良の表情を変化させはしない。
納得していない、という証。疑っている、という証拠だ。

けれどそれは嘘ではない。
俺はこの言葉を告げるのがすきだ。
口にしているその瞬間は、この言葉が真実だと信じ込めるから。

「お前のアイシテルって、ズレてるよな」
「そうかな」
「自分でよく知っているくせに」

そう、よく知っている。
これは事実ではなくて願いであることを。
そうであったらいいのに、とすがる気持ちであることを。

「俺はお前をアイシテナイ」
「そうか」

そんなことわかっている。
愛している、と告げるのはこちらからの一方通行だ。
耳にする相手が同じ感情を持っているかどうかなんて、わかりはしないこと。
だから、そうかと頷いた。そうだな、と納得した。

けれど、それはまた希沙良の燗にさわったらしい。

「納得したフリすんな。俺のことなんてなにもわかってねえくせに」
「わかるよ」
「それも嘘だ。お前はわかってない」

そうかも、しれない。
いや、彼がそういうならそうなのだろう。
最お前は俺に自分のことを話してくれないから。

「そして、肝心なことは何も言いやしない」

肩肘をつき、横目でこちらを睨むように視線を向ける希沙良。
確信を込めた瞳で、俺につきつける。

「お前の本心は、言葉の外にあるんだ」

そのまっすぐさに、俺は俺を否定される。

「嘘をつくくらいなら喋るな」

俺は、お前をこれ以上疑いたくないし、嫌いになりたくない。

「だからもう、アイシテルなんて言うな」

そんな風に、俺はこの言葉を封じられた。


Fin.


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