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ミッシツの恋(R+S)


「んじゃねー。お先しっつれーしまぁーす。」

部屋に残る十九郎と希沙良に背を向けたままひらひらと手を振って、諒はさっさとエレベーターへと向かった。

「じゃぁまた。」

それに続いて、冴子も2人に挨拶を交わす。

「おう。」

「気をつけてね」

十九郎に笑顔で見送られ、先を行く諒を追いかけて、冴子もエレベーターへと向かう。
諒がエレベーターのドアを開けて、待ってましたと冴子を迎え入れる。
冴子がエレベーターに乗り込むと諒は、すぐに「閉」のボタンを押した。

「さぁーえこ。」

扉が閉まると、途端に諒が冴子の腕を掴んで、自分の方へと引き寄せた。
最近、人の乗っていないエレベーターに乗ると、諒は決まって甘えてくる。
いつも通り、諒が次の行動に移ろうとした瞬間、冴子は諒を突っ撥ねた。

「ちょっ…やっ…。」

いくら他人の目がないとはいえ、忍のマンション敷地内で…―キスなんて。

「あれ?嫌なの?」

諒がはたと冴子の目を覗き込む。
確かに「や」と拒絶の言葉を発したが、諒はその真意を確認するように冴子の目を見つめた。

「……嫌、じゃ…ないけど…。」

“じゃないけど?”と諒が目で聞き返す。
嫌じゃないけど…やっぱりここじゃ困るかも…。
でも、諒を拒絶してるわけじゃない。
なんとかそれを伝えようと冴子が諒の袖を掴んだ。

「素直じゃないね〜。おいで。」

わずかに頬を染め、俯いて、困り果てた冴子を見て、苦笑してしまう。
本当に嫌なら、突っ撥ねればいい。
判断を冴子に委ねるように、ゆっくりと優しく引き寄せて抱きしめた。
冴子も抵抗するでもなく、諒のなすがまま諒の腕の中へとおさまった。
すると諒は、自分の胸から冴子を引き離し、ゆっくりと髪の毛を撫でて、下から救い上げるように口付けた。

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エレベーターのランプが下降していく。

「そんなに気になる?」

諒が唇を離して、鼻の頭と頭があたる距離で囁いた。

「…なにが?」

「冴子さん、ずっと目で階数見てる」

冴子の肩口に頭を埋めて、軽く溜息をつきながら、ぼそぼそとぼやいた。
責めている訳じゃないが、自分との行為に集中していないことが悲しくて、わざといじけてみせる。

「そういうわけじゃ…」

慌てて否定をしたものの、図星だった。
どうも公共の場でのこういうことは慣れない。

「見られちゃったら大変だもんね。」

「……。」

キスなんてしたくなかったよね?と皮肉を込めた諒の口調に冴子は言葉を詰まらせた。
キスをしたくなかったわけじゃない。
公共の場でのそのスリルが、時々、心地良いと感じることもある。

「期待、してたでしょ?」

全て見透かしたような顔で諒がにやにやと笑いかける。

「…してないわよ…」

まさに諒の言う通りだったけれど、肯定するのは悔しくて、とりあえず否定した。

「ホントに?」

それでも、諒は冴子の嘘を見抜いて、しつこく聞き返す。

「…ホントよ!」

冴子も意地になって、頑なに否定した。
すると諒は、冴子の耳に唇が触れる距離で尋ねた。

「じゃぁもういらない?」

耳元で囁かれ、理性が飛んでいくのを感じた。
痺れるような誘惑。
心拍数がぐんぐん上がるのがわかった。
それと同時に頭のてっぺんまで血が上る感覚に襲われた。
このドキドキがどうか諒に伝わりませんように…―。
真っ赤になった顔を見られたくなくて、俯いた。

「…いじわる…。」

わかってるくせに。
なんて憎らしいんだろう。

ありったけの恨みを込めて、諒を睨みつけてみた。

キスを強請ってるわけじゃない。
私は怒ってる。
場所もおかまいなく迫ってくる諒に。

相変わらずふくれっつらで、睨みつける冴子を見て、諒はくすっと笑って
もう一度、深いキスをした。

私はこのミッシツが好きなのかもしれない。
このままこの箱が降下するのをやめて止まってしまえばいいと思う。

ランプが1階を指すと、諒は満足したような笑顔を浮かべて、私の唇を優しく親指で拭った。

なんでこんなに好きなんだろう…。
この人の声も。
笑顔も。
唇も。
指も。




END

風の向くまま




足元にカツンと転がる緑の石。



―――…おやすみなさい…。


       心の中で、静かに呟いた。



「さぁってと。レッツゴートゥホームと参りますか!」


いつからか、消えゆく者たちを慈しむようになった。
自分の仕事に疑問を抱き、嫌悪感に苛まれる事も無くなった。


――風向きが変わった。
凍てつくような向かい風から、暖かい追い風に。


脳裏に浮かぶ長い長い道。
昔はそこにヒトリ立ち尽くしてた。
雨ニモマケテ 風ニモマケタ。
ある時、嵐が来てすべてを奪っていった。
けれど、その後、大切なモノを手に入れた。


友達と呼べる人たち…――。


「あ〜もしもし?冴子さん?今、終わった。」
「今日中にはそっちに帰りま〜す…って、え?なに?みんなで集まってんの!?」
「…うわっ…どうして、俺を仲間ハズレにするかな…。」
「わかった、わかりましたよ〜ダッシュでそちらへ向かいます〜。」
「うん…2時間くらいはかかるかな。俺が行くまで、帰んないでよ?」
「ほいじゃ、またあとで。」
…ったく、なんで俺がいないときにみんなで集まるかな。
ぜぇぇえったい謀られてる!
そんなコトを思いながら、プツリと切った携帯電話を恨めしげに睨んだ。
「こうしちゃおられん。」
横に倒してあったママチャリを慌てて起き上がらせて、一週間通った校舎を一瞥した。
「そんじゃ、急ぎますかっ!マッハGOGO号〜!!」
自転車に跨って、ペダルを漕ぎ出す。
夕涼みの中、初夏の風を切ってがむしゃらに走った。


先に続く長い道も、戦隊モノのオープニングみたいに仲間と並んで歩いていける。
そんな感じ。
たくさんの「好き」がある限り、人は優しくなれる。
今日も明日も明後日も…地球上のすべてのものに優しく在りたい。
石になって消えゆく者たちにも…。


――風向きが変わった。
凍てつくような向かい風から、暖かい追い風に。






END

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